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ぬっと立つ弘法

 宮田珠己さんの「晴れた日は巨大仏を見に」(幻冬舎文庫)を読んだ。高さ40メートルのデカい仏像を見に全国を回るという、珍風景紀行モノです。
 本書に登場する40メートル級のブツ、いや仏というと、淡路島の世界平和大観音、久留米の慈母大観音、加賀温泉の加賀大観音くらいしか見たことがないが(わざわざ見に行ったのではなく、たまたま目に入っただけ)、筆者はそうした巨大仏がぬっと立っている風景を「マヌ景」と称し、ズレた感じやダメな感じを楽しむという観点で旅をしています。
 宮田さんの文章はいつも大変面白いし、景観論としても秀逸だと思うんですが、本のよさはおいといて、実際に巨大仏が立ってる風景が面白いかというと、原風景原理主義者(なんだその主義)の僕が3つほど実物を見て思ったのは、醜悪な景色だなということ。なので、写真も撮ってません。
 宮田さんは「巨大仏周辺住民の反応は、おおむね次のいずれかに分類できる気がする」として、

1、気味が悪いので撤去してほしい
2、景観を破壊しているので撤去すべきである
3、自分の知ったことではないが、撤去されても特に異存はない
例外、もうひとつつくってほしい、たくさん並べてほしい

てな項目を挙げているけれど、僕が住民だったらだんぜん1です(筆者は3)。2だと、新興郊外型店なんぞ僕の基準では全部当てはまり、それはさすがに暴論になっちゃうので。
 ランドマークな建造物のない岐阜の田舎で育った身としては、何かの間違いで近くに巨大仏が立っちゃって、地元が異形空間になるなんて想像すると、かなりダークな気持ちになってしまう。なので、巨大仏がある地域の方には、同情を禁じ得ません。いや、まあ、同情されるほど地元では深刻じゃないかもしれないけど。

 東海地方には40メートル級なんて常識外れなブツはないので、幸いというかなんというかですが、そこまではいかないにしても、ランドマークな巨大仏はあちこちにありますね。そのひとつ、蒲郡市三谷の山上にどどーんと立つ弘法さん。前にも書いたことがありますが(→●□)。

100329-1.jpg

 昭和13年、名古屋の富豪で蒲郡観光開発の父、滝信四郎の寄進で造立されたもの。管理する金剛寺のサイトによると「地上百尺(30メートル)」とあるが、これは階段部分も含めた高さで、像自体は62尺=18m強です。62は弘法大師入寂の年齢にあやかった数字。
 昭和62年に発行された古写真集「蒲郡あれこれ」に建設中の写真が掲載されており、こんな解説が書かれています。

この弘法さんができてから、この南山も前の美養公園も温泉旅館が一ぱいでき、一大歓楽街になった。これも弘法さんの御利益であろうか。

遠く蒲郡からも山の上に大きなやぐらが見えて、どんな弘法さんができるのかとみんな楽しみにしていた。


 この当時は弘法信仰もごく一般的だったろうし、建造にあたっては「ありがたいもの」「地域にとってナイスなアトラクション」という共通理解があったということが想像されます。ちなみに美養公園は、のぎやんが立ってる公園です(→●□)。
 戦後~平成の巨大物というと、どうも成金特有のスピリチュアルなものが動機になってる例が多いようで、やはり胡散臭さは否めません。

100331-2.jpg

 この三谷の弘法さん、目立つかといえば実はあんまり目立たない印象があります。歩いていると目に入ってくるけど、車でこの辺を走っているときに弘法さんを意識したことは、ほとんどないです。
 高い場所にあって小くしか見えないので、宮田さんの本でいうところの「ぬっとある」という感じはあまりしません。つまり、風景に違和感を覚えさせるほど邪魔な存在ではない。
 以上のことから僕が言いたいのは、三谷の弘法さんはアリ、ということです。個人的には、知多四国の本がらみで弘法さんの御利益もあるし…(結局それか)。

100331-1.jpg

 でも、アップにするとやっぱりちょっと怖いぞ。蒲郡市では弘法山を「ラバーズヒル」なんつって売り出してるけど、カップルで夜景見に来て、振り向いたら闇の中にこの弘法さんがぬっと…。
(まさ)

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●□ お 知 ら せ □●
弘法さんが出たところで宣伝。執筆・撮影・地図ディレクションを担当した「2010年版地図ガイド 知多四国巡礼」(歴遊舎)が、書店および一部の札所寺院で発売中です。よろしくお願いします。

100316-1.jpg ←クリックで拡大します
監修 知多四国霊場会
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発行 歴遊舎
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コメント

nao

造られた仏像のお顔の視線が睨んでいるふうにしか見えず、
その仏師の許可なく、首から上を穏やかな面容のものにスゲ変えて
訴えられていたお寺の訴訟が、このほど判決言い渡されまして、
なにがしかのお金は仏師に支払われるものの、スゲ変えそのものは
とがめられず、”気味が悪い”という問題に、一定の理解が得られた…
らしいですね。

しかし、牛久大仏を真下から見上げたときには、
さすがにクラクラッときましたよ。さらに、ここにに昇ったときは、
竜ヶ崎~霞ヶ浦ほか関東東部一円が眺望できて面白かったです。
中に入ってしまえば、こっちのもんで、ただの高い塔ですから。

どうせ名物にするなら、夜になったら山上の巨大大仏の両目から
灯台よろしく光が出る…くらいのしかけが用意されてもいいのでは?
眼光鋭い仏像、というのも変ですが。


まさ

No title
仏教ロボ、アミダーマン。闇の世を慈悲の光で照らす、てなもんで…。

牛久大仏、行ってみたいっす。
非公開コメント

MARUKA-DO

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東海地方を縦横無尽、
全国各地に神出鬼没の
取材・執筆・編集事務所。
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まさ…岐阜・揖斐川町出身
まり…愛知・尾張地方出身
2003~2019愛知県知立市在住
2019~岐阜県揖斐川町在住

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