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初めての寄席

 『赤めだか』と『人生、成り行き~談志一代記』の二冊を読んで、落語を見なくては!と強迫観念に近い思いに駆られたワタシ。8月中旬に仕事で東京に行くことになったので、早速、スケジュールに寄席を組み込んで見に行ってきた。
 東京に古くからある寄席は、創業年の順に上げると、上野の鈴本演芸場、新宿の末廣亭、池袋の池袋演芸場、浅草の浅草演芸ホールの4ヶ所。ここはいつだって落語が楽しめるステキな場所だ。どの寄席でも昼と夜の部があり、休憩を挟んで大体4時間くらい。4時間ぶっ続けで落語をやるのではなく、落語を中心に色物(いろもの)と呼ばれる漫才やものまね、マジックなどの大衆演芸も見ることができる。10人以上の大衆演芸が大体2,500円くらいで見れるんだから、これはかなりお値打ちだと思うんだけど、いかがでしょうか。

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 さて、ワタシが選んだ場所は上野の鈴本演芸場。木造家屋の末廣亭にも惹かれたのだけど、後の予定を考えると鈴本のほうが好都合だったので、こちらの昼の部に行くことに。席は全席自由の当日券のみなので(団体は予約可)、開演の15分くらい前に着くように向かう。平日の昼間だからよっぽど混雑しないだろうと思ったら、座席は白髪交じりの男女でいっぱい。高座には若い噺家が上がっている。時間を間違えたか?と一瞬思ったが、すぐにこれが前座なんだと気が付いた。
 前から15番目くらいの中央列に空席を見つけ、「すみません」と声をかけて立ってもらう。列と列の間は狭く、足が極端に長かったり、横幅が極端に広かったりする人には、しんどい造りだ。座席には備え付けのテーブルがあり、周りを見渡すとビールや袋菓子が置いてある。場内は映画館や劇場のように暗くなく、煌々と明るい。決してムーディーではなく、下町の商店街に似た明るさだ。これが寄席なんだ。寄席独特のローカルな雰囲気に、テンションが上がった。
 
 8月中席の昼の部のプログラムは、マジック、落語、糸繰り、落語、落語、三味線漫談、落語、太神楽曲芸、漫才、落語、ものまね、落語の12席。落語は順を追うごとにレベルが上がっていく。強烈だったのは、前半最後に登場した林家しん平の「骸骨かっぽれ」。羽織から骸骨柄のスーツに着替え、場内が暗くなると踊り出す。骸骨柄だけが闇に浮かび、その踊りはシモネタ満載。中高年層、とくにオバちゃんらがキャッと言いながら喜んでいた。
 落語以外の色物芸も凄い。芸以上にキャラクターが個性的なのだ。瀬川瑛子を思わせるマジック女史は、容姿に似合わない甲高い声と「○○でしょ」のブリッコ口調に鳥肌が立ちながらも、そのアンバランスさが可笑しい。人形繰りで登場したニューマリオネットの老夫婦は、二人が醸しだす異様な雰囲気に呑まれそうになる。80本以上の糸を操る、その芸は凄いが、小さい操り人形(50cmくらい)を足下で披露するから前列しか見えない。それでも笑えるのだ。漫才のあしたひろし順子ペアは、大助花子の花子を、もっと強烈にした順子が凄かった。ドレスの柄は跳び箱柄。寸胴に近い体格だから、似合ってしまうのだ。ものまね芸の江戸家子猫は声帯模写という芸を披露する。祖父、父と代々受け継がれた芸で、そんじょそこらの動物芸とは桁が違う。客の要望にこたえてゾウやキリン、パンダの物真似をし、最後は得意の野鳥、ウグイスの鳴き声で締めてくれた。
 
 寄席は当たり外れが多いといわれているそうだが、その日のトリは三遊亭圓歌。落語協会会長も務めた三代目三遊亭圓歌師匠だった。もちろん、そのことを知ったのは家に帰ってからだが、高座姿や語り口から、格が違うことが一目で分かる。トリの持ち時間は30分。師匠の実の両親、義父母、前妻の義父母の、嘘か本当か分からない現実味あふれた話が繰り広げられた。後から聞けば、これは圓歌の十八番『中沢家の人々』の一部分で、初めて聞いたワタシでさえ涙が出るほど面白かったから、ファンにはたまらない噺だったはずだ。
 自分のジジババたちの振る舞いを際どい話を交えながら、面白おかしく話す。観客は、まさにワシ&ワタシこそがジジババです、という人たちばかり。一つ間違えば反感を買いそうな話もあるが、そこは上手に笑いで落とす。ジジイババアと言いながらも、圓歌師匠の噺には愛がある。何だかものすごく感動してしまい、最後は笑い泣き状態だった。
 寄席の後、浴衣姿に黒い帽子を目深にかぶった粋なお爺さんが演芸場から歩いてきた。恰好いいなぁと見ていたら、三遊亭圓歌師匠じゃありませんか!一緒に写真を撮らせてください!サインください!と声を掛けようとしたのだけど、東京の人々はマナーが恐ろしく良く、誰一人として声を掛けない。そこで、後姿だけこっそり撮らせてもらった。圓歌師匠はゲタを鳴らしながら、颯爽と歩いていく。一体、どこに行くんだろう。よしっ、後を付けてみようとダンナと二人でそろりそろりと付いていくと、路地を曲がり、また路地を曲がり、さらに細い路地を曲がり・・・。すっと消えた先は、町中のパチンコ屋。粋やっ!
 寄席に、落語に、三遊亭圓歌師匠に惚れた一日でした。

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コメント

毎日が日曜日6年生

 楽しく読ませて戴きました
 文書能力・・・凄いですね。
 面白かったですよ

mari

毎日が日曜日6年生さん

コメントありがとうございます。
また落語レポートを書きますので、よかったら見てください!

nao

あ~青春の落語
鈴本の話も九州の話も
感動の連続でいっぱい。
思わずうれしくなりました。

このブログでは、mariさんの方が
書き出したら止まらない、行替えなしの
漢字の多いフルコース。
シラけてない! 熱いんだね、この人・・・
mariさん、斜に構えないもんな。

しかし、なんだね、こう落語が流行るったァ、
わちきもびっくり。

池袋演芸場に、池袋西口にある立教大学の学生が
授業サボって押し寄せるなんざ、わちきの学生時分には、
聞いたこたァありやせん。

ブラウン管のなかの一発コントみてェな
コンパ芸人やお笑いタレントに「芸」がないのに、
世間が飽き飽きしちまったんでしょうかね。
アマチュアがのさばりすぎちゃったかな・・・。

わちきらの子供時分にゃ、
円鏡、円蔵、円歌も絶好調だったし、
柳屋小さん師匠もそらっとぼけのいい味出してました。
小さん師匠が永谷園のCMに出始めた頃から、
「?」と思っちまったんですが、
円楽一門がスーパースターみてえにブラウン管に
露出しはじめたら、なんだか寄席もつまらなくなりやした。
(と言ったって、もともと昭和30年代のテレビ草創期には
 柳家金語楼だの一龍斎貞鳳だの江戸家猫八だの三遊亭歌奴だの
 落語家なのかボードビリアンなのかよくわからない芸人さんが
 笑いの穴を埋めていたんだから、今更なんですけどね・・・)

春風亭柳昇みたいに、よだれの垂れそうな
ちょっと鈍なオヤジみたいな芸風も懐かしい・・・
(襲名した現在の柳昇じゃないですよ)

三遊亭円生の怪談は子供ながらに怖かったっす。
すごかったね~

40年前、土曜日にわちきらが学校から帰ってくると、
まっさきに見たテレビ番組が「吉本新喜劇」と落語中継。
現在のパワーの失せた吉本なんかとワケが違い、
ハチャメチャ度は、目をそむけたくなるくらいでしたわ・・・

翌日曜日の午後2時くらいからは、
大阪よみうりテレビ系の「松竹新喜劇」
待ってました藤山寛美の泣き笑い劇場です。
子供心にも泣けた。家族全員でハンカチ握りしめて泣きました。
あんな天才芸人、今も知りませんね。
そのあと、夕方4時からNHK演芸へ飛んで、
落語三昧でしたわ。

関東の落語に対して関西の人情喜劇。
漫才芸だって、今の人が知らないだけで、
夢路いとし・こいし(関西)の芸は国宝級の大爆笑でしたね。
今では一部がyoutubeなんかで見られます。

わちきらの幼い頃は、お笑いも限定されていて、
大人と同じ落語か漫才、喜劇をあびるように見て育ったので、
MANZAIブーム以降がどうにも馴染めなかったのですが、
時代がひとまわりして、プロの話芸に若い人が
惹きこまれていくことに、複雑な思いもいたします。

小学校の同級生のN・M君は、放課後に
教壇に座布団敷いて、落語を一席演じてくれました。
落語家になると張り切っていましたが、その後どうなったやら・・・
大学に入ると文芸部の3つ上のS先輩が、三遊亭円丈に入門して
大学を中退し、初高座が霞が関の砂防会館ホールであるから
来てくれと招待があり、部員全員で見に行きました。
汗を流しながら緊張して精いっぱい演じくれました。
三遊亭丈々寺という芸名でしたが、クリスチャンのそのS先輩、
その後どうなったやら・・・

ことほど左様に、わちきらの時代には、落語がごく当たり前に
身近にいっぱいあって、みんな、誰それがど~のこ~のと
よく知っていました。それくらいしかお笑いがなかったんですかねえ・・・

時代も環境も変わりましたが、落語の人気は今や
とどまるところを知らないようで、すごいですね。

mariさんのように寄席のライブに出かける人が
かくも増えるとは・・・。新宿末廣亭の2階桟敷から
ガラガラの席を見下ろしながら新人の落語や妙な手品や
形態模写を半日見ていた・・・なんて時代は完全に過去のこと。
寄席がはねて、夜には近所の歌声酒場「どん底」へもぐりこみ、
地階から響いてくるバラライカの音色やインターナショナルの歌
なんぞの唱和に、学園闘争のかすかな余韻にひたる70年代後半の
なんともやるせない空白を感じながら青春を消費していたあの頃。

う~ん、とりとめのない昔話になってしまった。
わちきも年をとりやした。




岩瀬 さとし

らくご 、まじっく
ぼくはホテル日航でやってたマジックショーに行ったことがありますよ確かそれは凄く高かったからまりさんたちが行ったのはかなり破格ですよ!ちなみに豊橋で今週の日曜日に落語があります!けんはうちのお客さんのスパー境田店で扱ってます。よかったら行ってみてください

mari

naoさん

naoさんのお話はうらやましいです。小さん師匠の落語、聞きたかったなぁ~。11月23日に六人の会が名古屋に来るんですけど、チケット即完売で入手できず。名古屋は落語も芝居も面白そうなものがこないから、数年だけ東京に住みたいです。

mari

岩瀬さん

落語情報ありがとうございます!豊橋のどこで落語会あるんですか?ご存知だったら教えてください。

岩瀬 智

らくご
らくごについて詳しくはスパー境田店に問い合わせてください。電話番号は0532529657ですチケットがたぶんあるはずです
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MARUKA-DO

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東海地方を縦横無尽、
全国各地に神出鬼没の
取材・執筆・編集事務所。
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まさ…岐阜・揖斐川町出身
まり…愛知・尾張地方出身
2003~2019愛知県知立市在住
2019~岐阜県揖斐川町在住

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